水中ドローン VS 潜水士?
日々進化し続ける水中ドローン。
はたして水中ドローンは潜水業務のプロである潜水士の代わりを務められるのでしょうか。
潜水士がいらない時代が来るのでしょうか。
おそらく技術が進歩していけばいずれはそういう時代がくるのかもしれません。
しかし現時点では水中ドローンは潜水士の仕事をすべて代行できるほど万能ではありません。
水中ドローンにできることは限られています。
今回は水中ドローンでどんなことができるのかを考えてみます。
「見る」ことに特化
水中ドローンは人間でいう「目」をもっているロボットで、水中の様子を「見る」ことに特化しています。
1080pの高画質映像をリアルタイムで見ることができます。
別のカメラを取り付ければさらに高画質での録画が可能となります。
搭載したLED照明が照度の低い深海で視認性を確保します。
100~300m潜水可能で、移動速度は2ノット(約1m/秒)、駆動時間は4~6時間(バッテリー1本)とすぐれた機動力を誇っています。
シンプルに「見る」だけの作業であれば潜水士に依頼するより水中ドローンを使った方がコストは抑えられるでしょう。
水中ドローンにできないこと
しかし、潜水士が行う業務は目視点検だけではありません。
設置、撤去、補修、触診など「手」を使う作業がたくさんあります。
その点、水中ドローンにはまだ「手」がありません。
マニピュレーター(人間の手作業を代行する装置)を取り付ければ、何かを掴んだり移動したりといった簡単な作業はこなすことができます。
しかし、繊細な指の動きが必要な作業となると「ロボット手術」のような遠隔操作が可能な高額なマニピュレーターが必要になります。
そうなると潜水士を雇った方がはるかに安く済んでしまいます。
水中での手を使う作業の多くは今後も潜水士が担っていくだろうと思います。
潜水士&水中ドローン
私は「水中ドローンVS潜水士」という見方をしていません。
むしろ水中ドローンは潜水士をサポートするツールとして使えると考えています。
水中ドローンを潜水士業務にうまく組み込むことで潜水士の作業効率と安全性をあげることが可能になるでしょう。
潜水業務は常に命の危険と隣り合わせです。
水中はどんな危険が潜んでいるかわかりません。
潜水士は安全を確保するために事前に潜り、水の濁り、視界の程度、潮の流れ、障害物などを調べる必要があります。
そんな場面で水中にすぐ投入できる水中ドローンは潜水士の強い味方になるでしょう。
潜水場所の下調べを水中ドローンに任せることで潜水士の安全の確保、作業時間の短縮、体力の温存が可能となります。
監視役としての水中ドローン
2012年に大分県保戸島の海で職業潜水士3名が作業中に命を落とすという痛ましい事故がありました。
事故はクレーン船のワイヤー2本を水深57mにあるコンクリート製ブロックに取り付ける最中に起きました。
死亡した3人のダイバーのタンクの空気残圧はゼロでした。
事故原因として窒素酔いによる異常行動を起こしたダイバーを助けようとして全員亡くなってしまったという推測がなされました。
しかし、ベテランの職業潜水士が3人とも亡くなってしまった本当の原因は特定することができませんでした。
潜水士の作業中の死亡事故は毎年起きていますが、このように原因がわからないままのケースが多いのです。
その理由は、実際に見た人がいないからです。
水中ドローンを監視役として潜水士に同行させれば、常に地上で潜水士の状態を把握できます。
潜水士に何かトラブルが発生したときにすばやく対応できます。
照度の低い深海であっても強力なLED照明を搭載すれば潜水士の安全性と作業効率をあげることができます。
水中ドローンのカメラを通して地上とコミュニケーションをとることも可能です。
水中ドローンは監視役として潜水士の頼もしい「バディ」になれると考えています。